化学物質過敏症「家具で・・・」2005/12/13, 毎日新聞 大阪夕刊ホームセンターの集成材で作った家具で化学物質過敏症になったとして、 奈良県大和郡山市の20代の男性が、 国の公害等調整委員会に原因裁定を申し立てたことが分かった。 化学物質過敏症を巡る同委員会への申し立ては初めて。 03年の建築基準法改正で、建材にはホルムアルデヒドなどの 化学物質について放散量などの使用規制が設けられたが、 家具類などには全く課せられておらず、同委員会の判断が注目される。 申し立てによると、男性は04年4月、集成材を購入し、 自宅で組み立てて机として使い始めたが、5月に突然、じんましんが出た。 その後、アトピー性皮膚炎にもなり、関節部の皮膚が裂けるなどした。 けん怠感や不眠などさまざまな症状も現れたため、 仕事に集中できず支障が出た。 ところが、男性が12月に机を撤去すると、 約1週間で病状が好転したという。 男性は今年2月に、北里研究所病院・臨床環境医学センター(東京都港区)で化学物質過敏症と診断された。 男性は、原因裁定が出た後、提訴する方針。 一方、ホームセンター側は、民間の検査会社に集成材の検査を依頼。 その結果、購入8カ月後のサンプルで、 ホルムアルデヒドの放散速度は1時間で1平方メートル当たり17マイクログラム、 アセトアルデヒドは同11・1マイクログラムだった。 ホームセンター側は「公害等調整委員会で審理中であり、 コメントできない」としている。【河内敏康】 ◇化学物質過敏症に詳しい柳沢幸雄・東京大教授(環境学)の話 家の換気状態によっては、一部の化学物質で国が定める室内濃度指針値 (ホルムアルデヒドは1立方メートル当たり100マイクログラム、 アセトアルデヒドは同48マイクログラム)を超えていた可能性がある。 家具などはこれまで規制されておらず、基準値の設定が必要だ。 ………………………………………………………………………………………… ■ことば ◇原因裁定 公害紛争の解決を目的とした公害等調整委員会が下す法的判断の一種。 公害と被害との間の因果関係だけを審理するため、 民事訴訟に比べ迅速な解決が図られ、費用も安いなどのメリットがある。 |